施設整備・建築設計
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現在弊院は土地建物とも賃貸で運営しております。このたび不動産業者からこの土地建物を買い取ってはどうかとの提案がありました。今の家賃が銀行返済原資になりますので資金的には可能と思っていますが、税金のことを考えると心配です。
1.どのような点に注意しなければなりませんか? たとえば、現在損益ゼロで運営しているとして、家賃月額150万円がPLの営業費からなくなり、利益計上されるということは、その40%が課税され90万円しか返済原資がないということになりますか?
2.実は弊院は、2階建建物の1階部分を使用していますが、2階には別会社(弊院関連会社)がショートステイセンター(以下「センター」)をクリニック併設型で運営しています。この物件を取得した場合、センターから家賃をもらわなくてはなりませんが、弊院で家賃収入があってもよいものでしょうか? もしダメなら「業務提携費」などとして回収することはできますか? いずれにしろ、センターから見れば家賃ゼロ計上で運営することができるものでしょうか? -
ご質問の文面から医療法人ではない診療所として回答します。
1.土地建物を自前のものとして運営することを検討されているとのことですが、単純に考えるならば、ご指摘のとおり、返済原資は40%課税の前提では90万円、支払利息や減価償却費を考慮するならばさらに少なくなります。しかしながら、これは軽装備経営から重装備経営への戦略転換であるともいえ、単純な損益指標のみでは経営判断材料として不十分であると思われます。
一般的に、重装備経営は金利が安定し、土地価額が上昇している状況で有利な戦略と考えられます。ここで、鍵となるのはキャッシュフロー(以下「CF」)を考慮した経営を実践できるかどうかといえます。
以下に、CFに着目した際に重要となる代表的な財務指標を示します。
・CF利益率 = (医業利益+非資金取引)/医業収益×100
・インタレストカバレッジレシオ(ICL) = (業務CF+受取利息+税金)/支払利息
・債務償還年数 = 有利子負債/業務CF
「CF利益率」は、医業収益(売上)に含まれているCFの当期・増加額を示すもので、一般に10%以上が求められています。
「インタレストカバレッジレシオ(ICL)」は、金融費用(金利支払額等)に対して業務CFで獲得した資金(金利受取と税金を戻した)が、何倍あるかを示しており、この倍数が高いほど金融費用の支払能力が高く、財務的な安定度は良いとされ、一般的に最低でも10倍以上確保することが望ましいとされています。
「債務償還年数」は、業務CFで獲得する資金によって有利子負債を何年間で返済できるかを示すもので、この比率は、一般的に短ければ短いほど良いとされています。まずは、これらをはじめとする財務指標等から、自院のキャッシュフローの状況をご確認ください。軽装備経営から重装備経営への移行は重大な戦略転換でもありますので、たとえば、地域包括ケアシステムにおける自院のポジショニング等の将来構想も含めた中で、慎重に戦略を検討なさることをおすすめいたします。
2.診療所の医師が個人として土地建物を購入し、個人の不動産所得の収入金額とすることは可能です。当然ながら、ショートステイセンターと先生個人が賃貸借契約を結ぶこととなります。“センターから見れば家賃ゼロ計上”の意味が不明ですが、別会社でもあり、適正な賃料が設定されるべきと考えます。
銀行からの融資では、その会社を含めた財務指標がチェックされるはずです。回答日【2013.6.3】