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首都圏近郊の医療法人様から、健康保険法に関して相談を受けました。
在籍するスタッフが当院で診療、入院をする場合に、費用の一部を免除しておりました。具体的には、入院の場合の部屋代1日8,000円程度、外来の場合、一度窓口で支払った後、給与時に払い戻しをされていました。
医療費免除は割とよく聞くのですが、2011年頃でしたでしょうか、都の医療監査で指摘があったと聞きました。その指摘の内容を教えていただけるとありがたく存じます。

この解答のために「保険医療機関及び保険医療療養担当規則」(昭和32年厚生省令第15号:令和5年4月1日施行)(以下「療担規則」)と、福利厚生費に係る課税関係の2つに分けて、以下に回答します。

1.療担規則について
 療担規則第2条の4で、保険医療機関は「健康保険事業の健全な運営を損なうことのないように努め」ることを前提に、第2条の4の2第1項で患者に対し、第2項で事業者またはその従業員に対し、経済上の利益(値引き診療も含む)の提供による誘引を禁止しています。
 さらに保険医について、第23条の2で「保険医は、その行つた診療に関する情報の提供について、保険医療機関が行う療養の給付に関する費用の請求が適正なものとなるよう努めなければならない」と規定し、適正な費用の請求の確保を明示しています。
 これが、保険診療における値引き(事業者の一部負担等)ができない根拠とされています。

2.福利厚生費について
 医療法人が職員・役員の福利厚生目的で支払った医療関係費用は、「職員・役員への福利・厚生のために支出される費用」であるという側面とともに、実質的には「職員給与・賞与」や「役員報酬」と同じく、医療法人から職員・役員に対しての「経済的利益が提供された費用」であるという側面を持ちます。
 このため、税務上では職員・役員の医療関係費に対する医療法人の支出が、広く社会一般で行われている福利・厚生の目的の範囲内で行われている場合には「福利厚生費」として計上することを認めていますが、その目的の範囲を超えて行われている場合には「職員給与・賞与」や「役員報酬」として計上することが必要であるとしています。
 より具体的に福利厚生費とするためには、次の3要件が必要と思われます。
要件1 支出目的および支払形態:職員・役員の健康管理上の必要性から行われる「定期健康診断」「人間ドック」等の費用を医療法人が支払っていることが必要でしょう。
要件2 対象者:すべての職員・役員(※)を対象とした「定期健康診断」「人間ドック」等の費用であることが必要でしょう。
(※)役員については、「定期同額給与」からはずれる可能性があり、遠慮(除外)してもらっている現況があります。
要件3 医療法人が負担する費用金額:「定期健康診断」「人間ドック」等の費用額が、職員・役員の健康管理上必要であると考えられる程度の金額の範囲内であることが必要でしょう。

3.むすび
 社会保険診療を行う医療法人は、自己負担分の割引などは療担規則による禁止とともに、所得税課税上の問題が生じます。実務的には、ここで示したような要件を具備した「職員(※)に対する診療費の減免に関する細(規)則」を、顧問税理士とともに策定(所轄税務署等への疑義照会を含む)して、透明性を高めて実施すべきと思います。
 当然、「全ての職員」を対象とした上で、「窓口で直接減免せず、細則に基づき審議し、別途福利厚生費または給与とする」ことが必要と思われます。
 なお、数年前に「都の医療監査で医療費減免の指摘があった」とのことですが、小職の知る限り、かなり前に某医療法人で「高齢者の自己負担と職員の自己負担を免除した事例」があり、これは療担規則でいう患者誘因となり、反面調査が行われるべきでしょう。

回答日【2021.11.26】

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